魚探ラボ すぐに役立つ電子機器解説
小型GPS「GP-33」の設置例で、小型ボート「てらっち号」における新型GPS航法装置「GP-33」装備状況を紹介したが、先日、再訪船の機会があったのでその後のGPS活用状況を見学してきた。
この艇は全長20フィートの小型フィッシングボートでヤマハ製。船外機は50馬力が1機搭載されている。明石の二見ボートパークをホームポートとして播磨灘で釣行を楽しんでいる。
今夏の猛暑は異常だった。その影響が本艇にももろに現れていた。海水温の上昇で、船底にはいつもの年に比べて強烈なほどの藻が付着したとのことである。
訪船時は船底塗装が施された直後であったため、乗艇時はエンジン音も軽快に快走した。当日、気温が少し低めだったが、クルージングは実に気分爽快であった。
今日は「てらっち号」に搭載されている航海電子機器の動作状況の見学乗船である。
本艇の航海電子機器は、今夏に新設した小型GPS「GP-33」、魚サイズがわかる小型魚探「FCV-620」、GPSプロッタ魚探「GP-1850WF」の3機種が搭載されている。全てフルノ製だ。
特に、小型GPS「GP-33」は、いまプレジャーボート業界で注目されている新型GPS航法装置である。本機は、小型ボートに最適なGPSであるとともに、大中型ボートのGPS測位センサーとして、また補助用GPSとして導入され始めている。もちろん、ヨットにも活用可能である。
午前9時。離岸前にGPSで今日の行先を決める。今日は、ポートの水路を東へ抜け、何度か変針しながら最終目的地まで走行するコースとなる。
播磨灘では、秋が深まるころ冬場に備えてノリダナなどの整備が始まる。このため地元漁港からは多くのノリ船が出入りするほか、海上ではノリダナ作業船が行き交う。
ノリダナは海面からわずかに顔を出しているだけであり見づらい。タナへの乗り上げ事故防止のためにも慎重にワッチしながら操船しなければならない。
本艇オーナーの寺岡良一さん(54)の話では、「定位置にノリダナが設置されていると分かっていても、夜は本当に見づらいですね。ですから、航行の安全上、夜間は走らないようにしています」とのことだった。
さて今日は、二見ボートパークの南東部に位置するカンタマの瀬を行先として設定することにした。海図を見ると水路を出た東端あたりからノリダナが大きく張り出しているため、何回かの変針が必要だ。
今日の走行距離は短いが、ノリダナを左右に見ながら走ることになる。このような走行では、あらかじめノリダナを避けるコースを設定することで、前方視認とともにより安全な走行実現につながる。
このGPSには、すでにいろいろなポイントが入力されているので、それを変針点として使用する。まずは「GP-33」に今日の目的地であるカンタマの瀬を入力する。
そのポイントを基準に、ノリダナを避けながら走行するコースの変針点を決める。今回の変針点は、江井ヶ島や今瀬など3箇所を使うことにした。
これで出港準備は完了である。GPS画面上には、離岸したあとボートパークの水路を東進し、カンタマの瀬までの走行案内コースが引かれている。
GPS画面上には、緯度経度線の格子による海図(海岸線地図表示は無し)が表示されるので、目的地までのコースがビジュアル的に把握できる。もちろん、変針点もハッキリとわかる。
ポンツーンを離れてからのGPS画面は、海図表示のままでもよいが、寺岡さんは操舵状況が直感的に把握できる舵取りモードに切り替えていた。
潮や風によって本艇の動きが影響を受け、船体が流されることがあるが、舵取りモードではその様子がよくわかるとのことだ。 変針点の通過付近にくると、舵を次の変針点に向ける。これで設定したコース上を順調に走行しているのがよくわかる。
今日は波も少なく穏やかな海面である。このような海況ではカートップや小型ボートで釣りを楽しんでいるアングラーが多い。
他艇が「てらっち号」のコース上にいたり、コースのすぐ横付近で釣っていることがよくある。他船動向をワッチしながら、時にはコースをずらしたり、波立たないように低速で走るという気配りには感心した。
本艇に新設されたフルノの新型GPS航法装置「GP-33」。このマシンは小型軽量のため装備が容易で、しかも使い勝手がよいマシンである。
ここで本製品の特徴についてメーカー担当者に取材したので簡単に紹介しよう。
もともと「てらっち号」には、2つの航海電子機器が搭載されている。1つはGPSプロッタ魚探であり他の1つは魚サイズがわかる最新魚探である。 これだけの機器が備わっていれば20フィート艇の釣行用航海設備としては十分だが、より細かい船の動きを確認しながら、また魚群反応に対応したシビアな操船を実現させるために小型GPS「GP-33」を増設したとのことだった。
オーナーの寺岡さんは、「このGPSは予備用センサーとして付けた。小型機ながら海図上に自航跡まで表示できること、また海図縮尺も拡大すると0.02マイルまでズームアップできる。既設のGPSプロッタ魚探では0.125マイル止まりのため、ピンポイントへの操船では舵取りが難しいです」とのこと。0.02マイルレンジは、細かい操船に役立つため、冬から春にかけてのメバル釣りに期待しているとのことだった。
また、本艇にはフルノの魚サイズがわかる魚探が搭載されている。寺岡さんは、「航海機器は単独装備がいい。GPSと魚探は別々に装備したいですね。特に魚探はいつも大画面でフルに探知観測したいです。まあ、どうしても1台のスペースしかないようならGPSプロッタ魚探になってしまいますが」。
「釣行が目的なら、魚探だけは単独装備をおすすめしますよ!」と熱い寺岡理論を語ってくれた。
(取材協力:「てらっち」号、古野電気)ボートフィッシング誌2010年11月号掲載
神戸市須磨区在住
「ボートフィッシング」では、「すぐに役立つ電子機器解説」の連載を持つ。
著書:「電波航法機器」「電波機器と超音波機器」「魚探・GPS100%使いこなしブック」他