魚探ラボ すぐに役立つ電子機器解説
フルノから2機種の新型カラーGPSプロッタ魚探が発表された。新機種は、操作性や視認性、装備性を格段に向上させた中小型フィッシングボート用マシンだという。
このGPS魚探は、7型ワイドの「GP-1870F」と5.7型「GP-1670F」の2機種。液晶サイズが異なるほかは、基本的な電気性能や動作機能は変わらない。
指示器は横置きスタイルである。漁船用GPS魚探などでは装備場所の関係から縦長スタイルが多いが、この2機種はプレジャー用としてスマートで安定感のある横置きデザインが採用されている。
GPSアンテナが指示器本体に組み込まれており、装備が容易になっている。指示器本体には、高精度測位が可能なGPS受信部、視認性の高いプロッタ部、そしてユニークな機能を搭載した2周波数デジタル魚探部が内蔵されている。
基本表示モードは、海図上に自船位置と自航跡を表示する「GPSプロッタ画面」と、魚群や海底状況を表示する「魚探画面」である。もちろん、これら2機能を1画面上に分割表示するモードや、単独全画面表示するモードなども選択できる。さらに、AIS(船舶自動識別装置)やエンジンモニターなどのいろいろな航海データセンサーの表示もできる。
航跡記憶等の仕様を見てみると、自航跡は3万点まで、目的地も3万点の記憶ができる。メモリー容量が大きいので、長期間の自航跡記憶表示が可能だ。また、ルート航法は1,000ルートまでの設定が可能となっている。
GPS受信部には50チャンネルのオールインビュー回路が内蔵されている。もちろん、衛星信号活用による位置補正測位(WAAS)も搭載されているので、より精度の高い測位が実現する。
フルノの発表資料によると、GPSによる測位精度は10メートル、MSAS使用時は7メートル、WAAS(米国)使用時では3メートルと高い精度だ。最近のGPS受信機は精度が高くなっており、両マシンも実質的な測位精度は高い。ピンポイントの位置決定には有効である。
7型ワイドと5.7型の画面サイズの異なる2機種があるが、フルノのこだわりとして、どちらにも表示解像度の高いVGAとWVGAの最新カラー液晶表示器が採用されている。
この液晶は画面表示輝度が明るく、直射日光下においても画像は見やすいとのことである。
資料によると、明るさは7型ワイドで900カンデラ、5.7型で800カンデラもある。
ここでこの液晶表示器についてその特徴を見てみよう。表示器には3大特徴がある。
の3つである。
従来の液晶表示器では、装備環境や気象の影響によって表示器部分に結露を生じることがある。このため結露部分のくもりが視認障害となって画像や映像が不鮮明で見難くなるということが多々あった。
この結露障害を無くすために、新機種では高度なボンデング技術を導入している。これはカラー液晶表示器と表面の保護用アクリル板との間を透明ボンドで埋めることで、空気層の隙間を無くし、結露現象を防ぐというものである。
空気層が無いため画面のくもりが生じず、クッキリ・ハッキリの画像表示となる仕組みである。装備環境の厳しい小型ボートにおいても結露障害の心配が不要という。
第2は、表示器表面のアクリル板にARガラスコートが施されていることである。従来機のアクリル画面では外光を反射するため画像が見にくいが、新機種ではコーティング処理により光の反射を抑制している。
このためアングラー自身の顔の映り込みや、空や海面の反射が抑えられ、常に最高の視認性を提供できるというわけだ。またARガラスコートは偏光サングラスをかけたときに生じる画像のブラックアウトを生じさせない効果もある。偏光サングラス越しでも快適な視認性が確保できるとしている。
装備・操作面の特徴としては、
の3項目があげられる。ここでその概要をみてみよう。
まず、1番目はGPSアンテナが指示器本体背面上部に内蔵されているという点である。このため基本的にはGPSアンテナを別途設置する必要はない。ケーブル配線やマストへの付帯工事が要らないので装備の手間が省ける。
ただし、指示器の設置場所によってはGPS信号の受信障害を生じる可能性があるが、このような場合は外部アンテナが使えるよう配慮されている。
また、新機種は基本設計はフルノ製プレジャーボート用GPSプロッタ魚探の代替機種として作られていることも大きな特徴である。指示器本体を交換するだけで旧機種の周辺ユニットをそのまま活用できる親切設計にもなっている。
送受波器、外部GPSアンテナ、電源ケーブルなどは、従来機種のコネクタとケーブルが使える設計になっており、換装工事が極めて簡単に行えるというわけである。
また、指示部の埋め込み装備では、別売のフラッシュマウント換装キットを使うことで、旧機種からの機器交換装備ができるという。換装工事が最小限に抑えられるので経済的である。換装は、電気に不慣れなアングラーでも、指示器背面のケーブルコネクタを挿し替えるだけの簡単作業で終了する。 ちなみに換装対象のフルノ製旧機器は「GP-1650」「1850」「GP-7000」の各シリーズである。
指示器本体の入れ替えだけで換装が可能なフルノ製旧型GPSプロッタ魚探。
GP-1650DF(左)とGP-7000F(右)
2番目の特徴は魚探部にある。新機種の魚探部には、フルノ独自の超音波デジタル技術が導入されている。今年1月に先行発売されたフルノ製新型デジタル魚探「FCV-627型」と同様のマシン機能が内蔵されているのである。
特筆すべきは、単体魚のサイズがわかるアキュフィッシュ機能のほか、最近、プロ漁師の間でも話題になっている海底質の判別表示機能が搭載されていることだ。
アキュフィッシュ機能とは、単体で遊泳する魚の大きさをセンチメートル単位で測定表示するもの。水深2~100メートルの間で、10センチ大から199センチ大の単体魚サイズを計測表示する。
フルノでは誤差を含むこともあるとしているが、アキュフィッシュ機能を活用するアングラーからは、「割合に正確なサイズが表示されるので面白い」との声をよく聞く。魚サイズ計測は、いまや使える機能としてアングラー仲間に浸透しているようである。
さらに最新機能として、海底質を識別しビジュアルで表示する海底質判別機能が組み込まれている。水深5~100メートルの海底であれば、岩・小石・砂・泥の4種類の底質タイプに分類し、画面下部に見やすいグラフィックで表示する。
この海底質判別機能は、海底の種類やその変化状況の把握に有効となる。魚のサイズ、水深情報などと併せて、対象魚の生息域に応じたポイント選定に役立ちそうだ。
ただし、海底質判別機能を作動させる場合は、送受波器を船底を貫通させるスルーハル方式、または送受波器を船尾後方外部に取り付けるトランサム方式にしなければならない。
最近、船底内部に送受波器を設置する艇をみかけるが、魚探の受信感度を向上させるためにも、深場の釣行のためにも、送受波器は完全に海中へ突出するスルーハル方式での設置がいい。
船底に穴をあけることに抵抗のある場合はトランサム方式をお薦めする。いずれにしても底質判別が実現すれば、面白い攻めの釣行が実現しそうだ。
新機種の超音波探知周波数は50キロヘルツと200キロヘルツの2周波数である。もちろん、画面上に2周波または1周波探知表示が選択できる。
標準発振出力は600ワットに設定されている。希望すれば別途1キロワット出力魚探も装備できる。
ただし、このとき送受波器は1キロワット用を装備し、指示器本体と送受波器間にマッチングボックスの接続が必要となる。
3番目の特徴は、画面の視認性と機器の操作性が向上していることだ。
カラー液晶表示器のすばらしさについては前述したが、従来機と異なるのは画面の見やすさや鮮明さ、装備環境に影響されない視認性である。
特に、スポーツフィッシャーの必須アイテムである偏光サングラスに対応したARコートガラスの採用は、艇上の行動範囲を広げてくれるだろう。真夏のギラギラした海面反射や強烈な太陽の下でも十分な視認性を確保できるのはありがたい。
また、液晶画面に結露を生じないことも大きなメリットだ。ルーフやオーニングのないセンターコンソール艇への装備は最高に適している。
そして、従来マシンに比べて操作性が一段と向上している。特に、パネル中央に配置されたロトキー操作では、このキーひつで必要なメニューを呼び出すことができる。
ロトキーの回転操作で海図の拡大縮小がダイレクトにできるほか、ロトキー中央を押すことで画面右端部にメニューバー表示が可能である。
他のキーはロトキー周辺に配列し、ユーザーの実操作頻度にマッチしたキーレイアウトとなっている。
実質的な操作キーは、電源キーを含んでわずか8個である。少ないキーのため操作も簡単であり、実に使いやすいマシンといえる。
(ボートフィッシング誌2012年3月号掲載)
神戸市須磨区在住
「ボートフィッシング」では、「すぐに役立つ電子機器解説」の連載を持つ。
著書:「電波航法機器」「電波機器と超音波機器」「魚探・GPS100%使いこなしブック」他