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ニューペックの魅力

船舶を安全に航行させるためには、海図は不可欠の航海用具である。今日、大型外航船などにおいては、航海用電子参考図(ENC)を電子海図表示システム(ECDIS)画面に表示して安全操船に活用している。一方、プレジャーボートや漁船などの中小型船においては、航海用電子参考図(ERC)をGPSプロッタ画面上などに表示して、釣行や操業に活用している。 ただし、航海用電子参考図を使用する場合は、万一のために正式な紙海図の備え付けが必要なので注意しよう。

new pec(ニューペック)搭載の7型ワイドGPSプロッタ魚探「GP-1870F」。横広画面のため海図が見やすい。

一般財団法人 日本水路協会のあるビル。同協会ではいろいろな海図情報が入手できる。(東京・羽田空港)

小型船などの搭載されているGPSプロッタに使用する海岸線データは航海用電子参考図と呼ばれるものである。これはGPSプロッタ機器メーカーが独自の海図ソフトを製作し、航海用電子参考図としてユーザーへ提供している。

そのような中、2012年3月の国際ボートショーにおいて、新しい航海用電子参考図「new pec(ニューペック)」が表示可能なGPSプロッタ魚探が発表された。

「new pec」とは、一般財団法人 日本水路協会が開発した航海用電子参考図のことである。これは従来、パソコン画面に表示して活用されていものだが、古野電気ではnew pecが使える小型GPSプロッタ魚探を開発している。

はてさて、このnew pecとはいったいどのような電子参考図なのか、またnew pecが提供する海岸線情報とはどのようなもなのだろうか。先日、new pec生みの親である日本水路協会(東京・羽田空港)を訪問したのでその概要を紹介しよう。

「new pec」とは!

「これがnew pecです」とパソコン画面で説明する日本水路協会の内城刊行部長。

パソコンに表示した「ニューペック」画像。滑らかに描かれた海岸線、リアルな海底地形状況等が表示されている。

「ニューペックは、国土地理院の陸地データと海上保安庁の海底地形データを重畳させて・・・」と説明する内城刊行部長。

最近、フィッシングボート仲間で話題になっているのが「new pec」である。new pecには、海岸線データと海底情報が満載されているとのことであり、ボートフィッシングを楽しむアングラーにとっては活用メリットが大きそうだ。

日本水路協会 刊行部長・内城勝利氏の説明によると、ニューペックは2008年ごろから商品開発がスタート。そして、2009年7月からプレジャーボート向けの航海用電子参考図として発売が開始されているという。表示にはパソコンを使うが、今日では多くのユーザーがnew pecを活用しているとのことだ

new pecは、基本的には詳細な海岸線データに加えて、ち密な海底地形データの重畳表示が可能である。

大縮尺海図が刊行されていない海域の海岸線データには、国土地理院の2万5千分の1の陸地データが使われている。このため日本全国の海岸線が連続して詳細にリアルに描かれている。

一方、等深線データには海上保安庁が所有する海底地形データが使われている。このためnew pecの等深線はち密で細かくトレースされている。

海域や表示縮尺によっては等深線が2、5、10、20、200メートル毎に描かれており、画面の表示拡大によっては海底のくぼみ具合や瀬、漁場の隆起状況等々がよくわかる。明石海峡付近では1メートル単位での等深線も見られた。

同協会・刊行部長は、「new pecはすばらしく充実した内容に仕上がっています」と強調。特に、「海底地形データの活用で、今までにない詳細な等深線がトレースできている。フィッシングボートにとっては瀬や駆け上がりなど、ポイント探しに大きなメリットになりますね」と熱く語った。

new pecの生データを見る!

日本水路協会から発売されているnew pecデータ収録DVD。パソコン用。

ディスクトップパソコンモニターでは画面が大きいので見やすい。

国土地理院の陸上データと海上保安庁の海底地形データを重畳させて作成されたnew pec。実際の画像データとはどのようなものなのか、同協会でnew pecの生データを見せてもらった。

表示モニターはディスクトップパソコン用の大きな画面だったせいだろうか、実に滑らかな海岸線描写と幾条ものリアルで細かい等深線が描かれているのには驚愕した。

モニター画面に表示された海域は瀬戸内海の広島に近いところであり、大崎上島と大崎下島付近が現れている。そして、島と島の間には、細くて密度の高い等深線が幾条にも表示されている。

このような海域を航行中の場合、new pec画像から自船直下、前方、後方、左右舷方向まで、海底の起伏状況が手にとるようにわかる。また、釣行時には、どの駆け上がり、どの瀬がポイントになるのか、スピーディで的確な判断ができるなど活用メリットは大きい。

日本水路協会では、これらのnew pec製品(DVD)を販売している。日本全国の海岸線データが入った航海用電子参考図は81,900円、オプションの日本全国海底地形データは58,800円である。ほかに海域別版もある。

【表示例1】広島付近の海域。表示レンジは0.5マイル。それにしても等深線情報が満載されているのには驚いた。

  • 【表示例2】表示例1を拡大。表示レンジは0.2マイル。等深線、瀬、くぼみ、駆け上がりなどが一目でわかる。
  • 【表示例3】表示例2を拡大。表示レンジは0.1マイル。2メートル毎の等深線が表示されている。

new pec採用のGPSプロッタ魚探

フルノGPSプロッタ魚探用new pecカード。小さなカード1枚に日本中の海岸線と海底地形データが入っている。指示部本体の右下部分から差し込む。

新しい航海用電子参考図「new pec」は、標準でフルノの小型GPSプロッタ魚探に搭載されている。対象機は2012年夏に発売された5.7型「GP-1670F」と、7型ワイド「GP-1870F」の2機種である。

これらの製品には、日本全国の海岸線データと日本全国沿岸の海底地形データが入ったnew pecデータがSDカードで搭載されている。日本中のどの海域を航行してもいつも詳細な海岸線情報の表示が可能である。

製品価格は、new pec標準付属で5.7型「GP-1670F」が220,500円、7型ワイド「GP-1870F」が285,600円である(どちらも税込、送受波器別売)。高価なnew pecデータ込みの価格とすればこれは十分納得できる。

  • 7型ワイドのGPSプロッタ魚探「GP-1870F」
  • new pec搭載の5.7型GPSプロッタ魚探「GP-1670F」

(ボートフィッシング誌2012年8月号掲載)

著者紹介

マリンギアライター 須磨 はじめ さん

神戸市須磨区在住

「ボートフィッシング」では、「すぐに役立つ電子機器解説」の連載を持つ。
著書:「電波航法機器」「電波機器と超音波機器」「魚探・GPS100%使いこなしブック」他