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魚種ごとの反応

アカムツを追う vol.1

このGPS魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?

アカムツを追う vol.1:GPS魚探映像例 魚探では魚群反応が映っていませんが、GPSチャートの等深線から釣り場を決定しました

ボートはスパンカーを使ったエンジン流しにより船速0.5ノット程度で流しました。
魚探から発信する超音波の周波数は50キロヘルツで海中を探知した反応画像となっています。

この画像からは以下のような情報が得られます

  • 水深262メートル
  • 上層および宙層に緑~青の反応が層を作っている
  • GPSチャート上に2つのポイント(PT00231,PT00232)が登録されている

このGPS魚探画面はアカムツ釣りの最中にキャプチャー(撮影)したものです。
‘赤いダイヤ’ともいわれるこの魚は、一部では幻の魚ともいわれている滅多にお目にかかれない高級魚です。但し、全国的にみれば魚影が濃い海域もあり、‘ノドグロ’という愛称で庶民の食卓にも並ぶこともある魚です。
海域によっては水深100メートル以下でも釣れることがありますが、一般的には水深150~350メートルの中深場にて釣れることが多く、手中に収めることが決して易しい魚ではありません。それは釣りが難しいということではなく、ボート上からアカムツの存在を明確に判断しづらいという意味です。

船底に設置された送受波器(振動子)から真下に向けて発信される超音波は海中を伝わっていく過程で、その強さが減衰していきます。超音波の周波数が低いほど減衰しにくく、周波数が高いほど減衰しやすくなります。このことは夏祭りで遠方から聞えてくる祭囃子の音が、ドンドンという太鼓の音(低周波)ばかりが聞こえ、ピーヒャララという笛の音(高周波)が聞こえない現象と同じです。
音波の伝達にはこのような特性があるので、水深が深い場所の情報を得ようと思ったら低周波の方が有利となります。
今回の画面キャプチャーは低周波と高周波を発信可能なフルノGP-1870Fによるものですが、低周波を使っているのは300メートル近い水深の海底をしっかり捉えたかったためです。
さらに深場においては使用する周波数の選択のみではなく、感度調節も手動モードにて微調整を行なった方が装置任せの自動モードよりも海底をより明確に捉えることが可能になります。

話をアカムツに戻しましょう。海底から約20メートルの範囲を群れで泳ぐ習性のあるアカムツですが、魚探にてその魚群を捉えることは決して容易いことではありません。
実はこの画面もアカムツからのアタリが届いた直後にキャプチャーしたものですが、その魚群反応が映っていません。
それは群れの大きさ、密度、個体サイズ、さらに宙層の汚れやプランクトンの有無によって、魚探画面への映りに影響が出るためであり、その影響は水深が増すほど大きくなります。
画面に映らないような魚を狙う場合、釣り場を決定するうえでの指針となるのがGPSチャートの等深線です。海域の水深のチェックだけでなく、等深線の曲がり具合に着目します。
特に私が目安にしているのは等深線が「S字カーブ」(説明図参照)を描いている場所で、曲りの方向が変わることで潮流に変化が発生しやすいと考えているためです。
この日、ゲットしたアカムツも水深と等深線の「S字カーブ」から釣り場を決定し、結果に結び付けることができました。
魚群反応が見つからない場合の釣り場決定にはGPSチャートの等深線も有益な情報源の一つとなります。 

  • アカムツを追う vol.1:釣果写真 赤いダイヤとも呼ばれることのある深場の高級魚、アカムツ。その味は折り紙付きです
  • アカムツを追う vol.1:GPS魚探映像解説 等深線がS字カーブを描いている場所は海底付近の潮流が複雑に変化し、好ポイントとなっている可能性大です

著者紹介

友恵丸・友恵丸III 船長 小野 信昭 さん

FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター

北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。