魚種ごとの反応
今回はFCV-800にCW(連続波)タイプの送受波器(525-5PWD)とチャープタイプの送受波器(B150M)を同時に接続して得た探知画像を元に解説していきます。
魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?
この魚探画像は、船首に装備したエレキモーター(IPILOT)によってボートを1ノット程度の船速で走らせながら撮影(画面キャプチャー)したものです。
付近の海底底質は概ね砂であり、部分的に泥があることを底質判別機能で表示しています。一般的には砂や泥の底質の場所には凸凹が少ない印象を受けますが、この画像では海底ラインが複数本表示されていることに注目してください。これは送受波器から発信する超音波の指向角の範囲内に水深が異なる3つのエリアが存在する場合に映し出されるもので、砂や泥の海底でありながら複雑な地形であることが推察できます。このような場所では底潮の流れ方に変化が生じ、プランクトン類が溜まりやすく、それらを求めて多くの魚が集まります。
この魚探画面には底層から宙層にかけて水深方向の厚さが約15メートルにも達する大きな魚群反応が映っています。この魚群ではアキュフィッシュ機能による魚体長が表示されていないことから群れを構成する魚のサイズは小さめで、大型魚の捕食対象となりうる所謂ベイトフィッシュの可能性が高いと推察できます。
さらに反応表示を細かく見ていくと、群れの密集度が均一ではなく、密集度が高い部分と低い部分が存在しています。小さめの魚の群れで密集度が均一でない場合に考えられるのが、外敵に狙われて逃げ回っている際に発生する密集度のバラツキと、魚群が複数魚種で構成されているケースが考えられます。
今回の魚群は密集度のバラツキではなく、概ね2つの密集度となっていることから後者の複数の魚種が存在するケースだと推察できます。その群れの魚種は不明ですが、密集度のバラツキがなかったことから大型魚が存在する確信を持てませんでした。
それでもこの付近では過去に大型青物をゲットしていたのでジギングを開始してみるとほどなくしてブリ(ワラササイズ)がヒット。
その後、同じコースを流しなおすと先程の魚群反応の密集度が均一ではなく、バラツいたものとなっていました。
今までベイトフィッシュの密集度のバラツキを見ながら攻めるポイントを選定していましたが、今回の様に密集度が均一であっても攻めてみる価値があると感じました。
大型青物の場合は回遊する範囲が広いのでベイトフィッシュの密集度が均一だったとしてもダメ元で攻めてみることも必要だと実感しました。
ブリは成長過程で呼び名が変わっていく出世魚で、この映像に写っているものは関東ではワラサ、関西ではメジロと呼ばれる70センチ級のサイズのものです。主に小魚やイカ類を捕食するので、生きエサを使った泳がせ釣りやルアー(疑似エサ)を使った釣りが盛んに行われている人気のターゲットです。
この映像ではブリは2尾しか写っていませんが、撮影直前に20尾ほどの群れで現れ、この2尾を残して他のものはあっという間に去って行ってしまいました。この高根周りにはイサキが数多く群れていましたが、ブリは捕食行動せずに去って行きました。まだ空腹ではなかったのか?あるいは、群れていたイサキのサイズが大きめだったために捕食を諦めたのか?本当の理由は分かりません。魚群探知機のアキュフィッシュ機能を使って高根周りに群れる魚の体長を掴むことができれば捕食対象になり得る魚か否かを判断する指針になるでしょう。
FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター
北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。