魚種ごとの反応
底から10メートル上方に浮いたイサキの反応
まさに「宙層を狙う」イメージだ
イサキは群れで行動する魚で、外洋に面した潮通しのよい場所を好んで生息する。小型のうちは大群で行動し、季節に応じて生息する水深を変えていく。大型になると比較的小さな群れで行動するようになり、小型と同様にポイントを変えていくものと、1年を通じてポイントを変えない、いわゆる「居着き」のイサキに二分される。この居着きの大型は脂が乗り、釣り人憧れのターゲットの一つだ。
イサキは一般的には初夏の釣り物といわれていて、産卵期の6~7月にいわゆる乗っ込みのため、浅場の岩礁帯や根周りを回遊し始める。このころが一番釣りやすい時期なのでイサキは初夏の釣り物とされているが、実際には1年中狙うことができるターゲットだ。ただし、海域によっては資源保護の観点から禁漁期を設けているので、釣行にあたっては事前調査をお忘れなく。
イサキが集まるポイントの目安は、潮流が激しくぶつかる高根付近。魚群探知機でも、まずは「高根」を見つけることから始める。海底地形図があれば、等深線の間隔が迫っているところが岩礁の可能性が高く、さらに等深線が同心円状になっている部分が高根となる。ただし、イサキが着く高根は海底地形図には表現できていない。比較的小さな高根である場合も多い。実際には魚探を使って海中を探索し、高根とともにそこに着く魚の反応を探してポイントを見極めることだ。
イサキ釣りは魚探の本領が発揮される
面白いことにイサキは着く根と着かない根がはっきりしていて、前述の条件がそろっているように思えても、ほとんど寄りつかない根がある。一方、イサキが着く根は釣っても釣っても、また新たなイサキが寄ってくる感じで、ほぼ毎年よく釣れる。その根に、よほど魅力的な何かがあるらしい。
魚探に映る「高根に着く魚群反応」は、イサキ以外にもスズメダイ、サクラダイ、ネンブツダイなどがあり、反応が似ていて紛らわしい。画面は実際にイサキを釣り上げた数分後に撮影した画像で、画面左が周波数50キロヘルツ、右が200キロヘルツの2周波併記モードの表示。水深20メートル付近の魚群反応がイサキだ。ちなみに50キロヘルツの左画面では一見、高根頂点の水深は25メートルのように見えるが、本当は30.5メートルが正解。右画面を見れば 25メートルまで盛り上がっている魚群反応がわかる。この海底近くに着いた魚群を狙ってみたら、その正体はスズメダイとネンブツダイだった。このように、高根にまとわり着くような魚群反応は外道、やや高く浮いた反応はイサキというケースも多い。
もう一つの手段として、ボートを2ノット以下のスピードで根の上を通過させ、再び潮回りして同様に根の上を同スピードで通過させる方法がある。2度通過して、魚群反応が似ていれば外道の可能性が高い。というのも、イサキは高根に着くといってもジッとしているわけではなく、周辺を泳ぎ回っていることが多いから。つまり2回の探知で、反応画像の形状が明らかに変化するためだ。ただし、この方法は「同じライン上を同じスピードでトレース」しなければならならいので、GPS プロッタを駆使しないと実質的には困難だ。少しでも正解率を高めようと思ったら、魚群反応確認→実釣→魚群反応確認→実釣・・・を繰り返して経験を積むしかない。幸いにもイサキのタナは浅い。まず仕掛けを垂らしてみるという確認方法もそれほど苦にはならないし、一番確実な方法なのでぜひ実践してほしい。
記事:小野信昭さん 協力:隔週刊つり情報
イサキの群れが画面の左から右の方へ移動していく様子が写っています。よく見ると浮遊物が画面右から左の方へ流れており、イサキは潮流に逆らうように泳いでいることがわかります。
潮によって流れてくるプランクトンを摂餌するため、潮上に向かって口をパクパクしながら群れ全体が潮上方向へゆっくり移動して行っています。
この水中映像は水中カメラを用いて光学的にイサキを撮影したので体表の縦縞模様を捉えることができましたが、魚群探知機では反射波の到達時間や強度を用いるので体表の縞模様までは捉えることができません。イサキの縦縞は緊張したり、警戒心を持ったりしたときに表れると言われていますが、ゆっくり泳ぐ様子を見るかぎり、緊張や警戒状況の様には感じにくいのですが。もしかしたら我々人間がまだ解明や理解できていないイサキ同士のコミュニケーションや外敵からの防御のためにも体表の模様を変化させることがあるのかもしれません。
FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター
北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。