魚種ごとの反応
この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?
ビーク付近にイサキらしき魚群反応が映っており、よく見ると点ではなく線で表現されています
ボートは約2ノット(人が歩くほどの速さ)の船速で進めながら、撮影(画面キャプチャー)したもので、魚探から発信する超音波の周波数は画面左側が周波数の50キロヘルツ、右が200キロヘルツで海中を探知した反応画像となっています。
魚探画面は常に右から左へと表示が流れて行くので、底質判別機能による底質表示に着目すると、この画像ではボートが進むにつれボート直下の底質が砂から泥、そして岩へと変化したことが読み取れます。
一方、水深の変化に着目すると水深25メートルのフラット(平坦)な砂・泥地から急峻(きゅうしゅん)な岩礁帯へ向かってボートが進んだことがわかります。岩礁帯のピーク(頂上)は水深15メートルなので高低差10メートルほどの岩礁となります。
ボートを進めながら思ったことは、「この海底地形なら底潮さえ流れていれば岩礁の上には何かの魚群が着いているはず!」という推測でした。
案の定、ボートが岩礁のピークに差しかかったところで魚群反応が現れ始めました。それも岩礁にへばり付く反応ではなく2~3メートル上に離れている反応です。この2~3メートル上に離れていることが大切で、この魚群こそがアジやイサキである確率が高い典型的な反応です。
この画面を撮影(画面キャプチャー)した直後に、同じコースを再び流したところ、先程と同様の魚群反応が再び現れました。つまり、数分間が経っても魚群は大して移動せず、岩礁のピーク付近に留まっていたことになります。
魚探画面に映った魚群の反応をよく見て下さい。反応の中に「へ」の字形状のものがいくつも見受けられます。
一般的には大型の単体魚の場合に原理的に「へ」の字形状で表現されることが知られていますが、小型の単体魚でも泳ぎ回らずに留まっているような場合には反応表示が点(ドット)ではなく、例えば「へ」の字のように線(ライン)として表現されることが多々あります。
これは魚が移動せずに留まっているので繰り返し送受される超音波が同一の単体魚を捉え続けたためであり、画面が右から左へ移動していくので、点ではなく線となって表現された結果です。
水中画像はスキューバーダイビングで撮影したものですが、この時のイサキも大して回遊せず、岩礁のピーク付近に留まっている状況でした。写っている魚が一定方向へ向かって泳いでいないことからも底潮が速くないことがうかがい知れます。
このような時は魚の活性が低いことが多く、釣り人にとっては釣果をなかなか上げられない厳しい状況です。
しかしながら、こんな時こそ手前船頭の強みを活かし、上手くボートをコントロールすることで、あたかも潮流に乗ってエサが運ばれてきたかのような演出にチャレンジしたいものです。
活性の誘発に成功してゲットしたイサキに対しては、“釣れた”ではなく、“釣った”を実感することになり、ボートフィッシングがより一層楽しくなるはずです。
イサキの群れが画面の左から右の方へ移動していく様子が写っています。よく見ると浮遊物が画面右から左の方へ流れており、イサキは潮流に逆らうように泳いでいることがわかります。
潮によって流れてくるプランクトンを摂餌するため、潮上に向かって口をパクパクしながら群れ全体が潮上方向へゆっくり移動して行っています。
この水中映像は水中カメラを用いて光学的にイサキを撮影したので体表の縦縞模様を捉えることができましたが、魚群探知機では反射波の到達時間や強度を用いるので体表の縞模様までは捉えることができません。イサキの縦縞は緊張したり、警戒心を持ったりしたときに表れると言われていますが、ゆっくり泳ぐ様子を見るかぎり、緊張や警戒状況の様には感じにくいのですが。もしかしたら我々人間がまだ解明や理解できていないイサキ同士のコミュニケーションや外敵からの防御のためにも体表の模様を変化させることがあるのかもしれません。
FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター
北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。