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魚種ごとの反応

イトヨリダイを追う vol.3

今回はFCV-800にCW(連続波)タイプの送受波器(525-5PWD)とチャープタイプの送受波器(B150M)を同時に接続して得た探知画像を元に解説していきます。
魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?

イトヨリダイを追う vol.3 海底追尾拡大表示により海底付近の淡い反応の存在も認識しやすくなります

この魚探画像は、船首に装備したエレキモーター(IPILOT)によってボートを0.5ノット程度の船速で走らせながら撮影(画面キャプチャー)したものでこのポイントでは複数のイトヨリダイを釣りました。

この画像からは以下のような情報が得られます

  • 水深35.2メートル
  • 海底底質判別結果はSAND(砂)
  • 海底付近に単体魚の反応が映っている

右画面は海面から海底までを表示する通常表示で、上下2本の拡大マーカーで挟まれた範囲を左画面に海底追尾(BZ)で拡大表示しています。海底追尾とは水深変化により拡大マーカーで挟まれた範囲から海底が外れようとしても自動的に海底を追尾し、拡大表示を持続するものです。

今回の画面には海底から約1メートルの高さを泳ぐ単体魚の反応が明確に映っており、右側の通常表示でもその反応を確認することができます。
左画面の海底追尾拡大表示では先ほどの明確な反応よりもさらに海底に近いタナにやや淡い反応が複数映っていることまで確認することができます。
この反応がイトヨリダイだと断定することは困難ですが、イトヨリダイがヒットする時のタナは仕掛けの付けエサが海底からせいぜい3メートルほどの高さまでであることや、当日にイトヨリダイが釣れ上がった時には必ず同様の反応が画面に映し出されていたことを考えるとこの反応がイトヨリダイのものである確率が高いと言えるかもしれません。

拡大マーカーで挟まれた範囲を拡大表示することで淡い反応が存在することを認識しやすくなりますが、その実現に大きく寄与しているのがチャープ方式による高い分解能力です。
チャープ方式では一つのパルス内で周波数を徐々に変化させ送波し、魚にあたって反射し戻ってきた超音波に対してパルス圧縮処理を施すことで、パルス幅が短く、強いエネルギーの超音波を送受したのと同じ効果を得ることができるので高い分解能力を有する映像が得られることになります。

なお、今回の画面では底質判別結果が一様にSAND(砂)と表示されていますが、これは0.5ノット程度の遅い船速だったので画面に表示する時間軸の範囲内ではSAND(砂)のみと判別されただけで、実際にはこの前後にMUD(泥)やRCKS(岩)が判別表示されました。イトヨリダイを過去に釣った経験からは海底底質はSAND(砂)だけではなく、所どころにMUD(泥)やRCKS(岩)が存在するような場所を好むと感じています。

  • イトヨリダイを追う vol.3 釣果写真 群れの規模は不明ですが、一荷で釣れたことでイトヨリダイが複数存在することが明確になりました
  • イトヨリダイを追う vol.3 釣果写真 見た目にも美しく様ざまな料理に適した美味しい魚です

著者紹介

友恵丸・友恵丸III 船長 小野 信昭 さん

FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター

北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。