魚種ごとの反応
この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?
この魚探画面は、ドテラ流しの最中に撮影(画面キャプチャー)したもので、魚探から発信する超音波の周波数は50キロヘルツと200キロヘルツで、それぞれ画面の左側と右側に表示してあります。
画面に表示された海底ラインはほぼフラット(平坦)で、顕著な水深変化がないものの、海底底質が岩礁から砂地へと変化したことが底質判別機能によりわかります。
宙層に映し出された魚群反応は、画面上部に表示された分時マークにより1分以上にわたりボート直下に存在していたことがわかります。
サビキ仕掛けを降下させたところ、宙層にてアタリが届き12~15センチのウルメイワシが鈴なりに釣れ上がりました。画面に映っていた魚群反応の正体がウルメイワシであることが判明しましたが、1点気になることがありました。
今回、アキュフィッシュ機能により表示されている単体魚の魚体長の数値は30~40センチが多く、中には70センチや100センチという数値も見つかります。その数値と実際に釣り上げたウルメイワシのサイズが大きく乖離している点です。
アキュフィッシュ機能では魚の密集状況によっては複数の魚を単体魚と誤って判断したうえで体長を数値表示することがあるので、実際の魚のサイズと乖離が発生することがあります。
これまで10数年、アキュフィッシュ機能を使ってきた経験から、実際の魚のサイズの2倍程度にまで大きく表示することはあってもそれ以上に大きな数値を表示することは少ないと感じています。15センチのウルメイワシが海中に存在すれば、アキュフィッシュ機能により30センチと表示することはあっても70センチや100センチという表示にはなりえないという意味です。この経験から、当日は宙層にはウルメイワシ以外にもさらに大きな魚が居るのでは? と疑いました。
ウルメイワシはヒラマサやカンパチ、青物などのいわゆるフィッシュイーターから大人気のベイトフィッシュであり、また宙層の魚群反応が一様な分布ではなく、部分的に密集度合いが異なっていたり、魚群が引き裂かれたような亀裂が入っている点も気になりました。
ウルメイワシに似せた長さ10センチほどの細身のメタルジグをセットし、ライトジギングをスタートしたところ、早々に何かがヒット。慎重なヤリトリの末、50センチ弱のカンパチが釣れ上がりました。
カンパチはその1尾のみでしたが、その後40センチ程のブリ(イナダ)が数尾釣れました。
おそらく、カンパチもブリも一緒になってウルメイワシを追っていたことが想像できます。
魚探画面に表示されるベイトフィッシュの密集状況やアキュフィッシュ機能による魚体長の数値、実釣した魚のサイズなどの情報を元に、水中の様子を推測しながら釣り糸を垂らすと、ボートフィッシングが一層楽しくなります。
カンパチは体長1メートルを超えるような大型のものでは単独行動する場合もありますが、1メートル以下のものの多くはこの映像のように群れで行動しています。根周りに群れているアジやイサキを捕食しますが、その際にカンパチの群れはワンチームとなって行動します。
この映像では高根の上側に小型のイサキが多数群れていて、画面向かって左側の潮上方向を一様に向いて泳いでいます。ワンチームとなったカンパチ5尾は画面右側(潮下側)からイサキに襲い掛かっています。実はこの映像撮影時以外にも襲い掛かる場面を何時も観察していますが、そのほとんどが背後(潮下方向)からでした。一般的には魚の視野は広いので、背後から襲い掛かったとしてもイサキに気づかれているのかもしれませんが、潮流に逆らって逃げざるをえなくするために潮下方向から襲い掛かっているのかもしれません。真実を知りたいですね。興味が尽きません。
FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター
北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。