魚種ごとの反応
ここでいうカサゴは水深2メートル~30メートル程度の浅場に生息する標準和名カサゴのこと。岩礁帯や捨て石、障害物周りで1年中狙うことのできる身近なターゲットだ。
スキューバーダイビングでカサゴを観察すると、必ずといっていいほど岩礁にへばりついている。岩礁周りにはメバルも生息しているが、メバルが宙性浮力を保って浮かんでいるのに対し、カサゴはとにかく岩礁にへばりついている。こうした底生魚は、魚探にまず映らない。送受波器から発振した超音波が、魚に当たってその反射波が送受波器へ戻るまでにかかる時間と、海底に当たって戻る時間との間に「差」がほとんど生じないためだ。超音波が当たる2種類の物体(つまり、魚と海底)を分離できないので判別困難になる。魚探が海底へばりつく魚を苦手とするのは、このためだ。
とはいえ同じ底生魚でも、広い砂地のどこに伏せているか分からないカレイと違い、カサゴ狙いならば魚探が大活躍してくれる。カサゴが生息する岩礁帯を把握できるからだ。実際に潜ってみると、岩礁があればかなりの確率で数尾のカサゴの姿を見かける。極端な言い方をすると、カサゴがいない根は存在しないといっても過言ではないほどだ。つまり岩礁や捨て石、障害物などを魚探で見つければ、カサゴのポイントにたどり着いたも同然といえる。
ここでおさらいをしておこう。魚探は、送受波器から発振した超音波が密度の異なる物質(魚や海底)に当たって反射→送受波器に戻るまでにかかる時間を距離に換算→物質までの距離を画面に表示する装置である。そしてもう1つ、送受波器に戻った「超音波の強度」を画面内に表現している。海底ラインの下に伸びる「尾引き」の長さ(厚さ)がその強度に該当する。
超音波は岩礁などの硬い物質に当たると反射して戻りやすいが、砂や泥などのように軟らかな物質に当たると吸収されやすく反射して戻りにくくなる。つまり岩礁に当たると反射波が強いので尾引きが長くなり、砂や泥などに当たると反射波が弱くなるので尾引きが短くなる。このように、魚探画面に映し出された海底ラインの尾引きの長さによって、岩礁帯と砂泥地などを判別することができる。
魚探画像は実際にカサゴが釣れたポイント付近を船速2ノットでボートを走らせて撮影したものである。画面は2周波併記モードの状態で、画面左が周波数50キロヘルツ、右が200キロヘルツでの表示だ。
200キロヘルツ側(右)画面の、尾引きの長さに注目してほしい。魚探画面は常に右側から左側へゆっくり流れていくが、左側に砂地があり、右側に岩礁があるということは、ボートは砂地を通過して、現時点は岩礁帯に差し掛かっていることを意味している。つまりカサゴの生息ポイントである岩礁帯の上にボートが到着したわけで、魚探をつかいこなせばポイント自体は比較的容易に見つけることができる。また出航前に海図で底質が"R"(Rock=岩)と記された場所を調べておけば、効率よくポイントに近づくことも可能だ。ただし、カサゴを含めた根魚類には注意点がある。潮の動き次第で「時合」、すなわち釣れる時間帯と釣れない時間帯が明確なのである。ポイントごとに、よく釣れる潮の向きや流速の傾向をチェックして、ヒット率を高めていこう。とはいえカサゴは成長が遅い魚なので、釣りすぎはつつしみたいものだ。
記事:小野信昭さん 協力:隔週刊つり情報
根際の砂地でジッとしているカサゴの映像です。カサゴには多くの種類がありますが、この映像のカサゴが最も浅い沿岸部に棲息する身近なもので、標準和名カサゴという魚種になります。カサゴ類は水深の違いにより他の種類のものが釣れ上がることが多く、魚種によって棲息する水深が異なることを実感できます。
カサゴ類の食性は甲殻類や多毛類、さらには小魚を捕食するので、それらが集まりやすい岩礁(根)地帯やその周辺の砂泥地が主な棲息場所となります。映像にあるようにカサゴは普段、海底に這った状態にあることが多く、魚群探知機でカサゴそのものを見つけるのは困難なので、ポイントは棲息していそうな水深、海底底質、海底地形から探す必要があります。この映像では点在する根と根の間の砂地にジッとしていますが、根のてっぺん(頂上)付近に居ることも多く、根の凸凹を丹念にトレースしながら探っていく必要があります。その際は根掛かりにも注意が必要で、ヒット後には根の隙間に潜られないように速やかに根から引き離す必要があります。
FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター
北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。