魚種ごとの反応
この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?
ボートはスパンカーを張って船首を風上側へ向け、推進力をコントロールしながらほぼ一箇所に停止した状態で画面を撮影(キャプチャー)したものです。魚探から発信する超音波の周波数は画面左側が周波数の50キロヘルツ、右が200キロヘルツで海中を探知した反応画像となっています。
この画像に映っている魚群の正体はカタクチイワシです。
前述したようにボートはほぼ停止状態でしたが、カタクチイワシの大群がボートの下を通過している最中に画面キャプチャーしたものです。
カタクチイワシにとっての敵は人間のみならず、カモメなどの海鳥、そして、青物、マダイ、ヒラメ、根魚など天敵は多岐にわたっています。
それら天敵から身を守るために群れは密集隊形を作り、その1尾1尾全てが同調して同じ向きに泳いで敵の攻撃をかわす防衛策にて行動しています。
この時の大群は移動のスピードがとても遅く、ボートの下を通過するのに2分間ほどかかりました。
天敵に追われているカタクチイワシは移動スピードが速くなることを考えるとこの時は天敵が存在しなかったと推測できます。
さらにそれを裏付けることとして、魚群反応が規則正しい形状となっていることや、反応の密度が均一となっていることからも、天敵に追われることなく、ゆっくり泳いでいることが想像できます。天敵に追われているときは魚群が不規則で乱れたような形状となり、さらに反応の密度も不均一となります。
このように移動が遅い時には、カタクチイワシも安心して捕食行動するのでボートからサビキ仕掛けを降ろせば、鈴なりに仕留めることができます。実際にこの画面をキャプチャーした後、数十尾を釣り上げることができました。
魚探では体長10ミリ前後のシラスと呼ばれるカタクチイワシの仔魚から魚群反応をとらえることができますが、実際に少なくとも体長10センチ以上のものでないと釣りの対象にはならないでしょう。
今回の画面画像では魚群の上側にはアキュフィッシュ機能による単体魚の体長表示があります。その中には「43」や「53」といった大きな数値もありますが、それらは複数の小さな魚が密集することで誤って算出した結果であることが多く、このような時には数値の最も小さなものを読み取ると実際の魚の体長に近いものとなります。この画像の場合には「12」となります。この考え方は魚群反応が規則正しい形状となっていることや、反応の密度が均一となっていることが前提です。
もし、魚群反応が不規則な形状で反応の密度が不均一な時にサイズの大きな単体魚が表示された場合には大物が実在する可能性が高くなります。
魚探に映るカタクチイワシの反応の形と密度の均一性、アキュフィッシュ機能による単体魚のサイズ・・・それらの情報から総合的に水中を推測すると釣りが一層楽しくなります。
カタクチイワシは泳ぎながら口を大きく開けることで海水を取り込み、エラでろ過することで海水とともに取り込んだ動物性プランクトンや植物性プランクトンを摂食します。この映像ではわかりにくいのですが、この時も摂食の真っ最中でした。
サビキ仕掛けでも手軽に狙うことのできるカタクチイワシは体長15センチほどの小さな魚ですが、食味が良く、古くから日本人には目刺し、煮干し、アンチョビなどとして馴染み深い魚となっています。人間の食用はもちろんのこと、釣りにおいてもとても有効なエサとなります。具体的なターゲットとしては小さなものではメバル、カサゴ、ソイなど、大きなものではヒラメ、マゴチ、マダイ、青物など・・・多くの魚がカタクチイワシを好んで捕食します。自然界において青物類に追われている時はこの映像のように口を開けながらゆっくり泳ぐのではなく、抵抗にならないよう口を閉じ、猛スピードで逃げることになります。
FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター
北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。