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魚種ごとの反応

カワハギを追う vol.6

この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?

カワハギを追う vol.6 GPS魚探映像 ターゲットが魚探に映りにくい魚種の場合には、底質判別機能は大変心強い武器となる

ボートは約2ノット(人間が歩くほど)のスピードで進めながら撮影(画面キャプチャー)したもので、魚探から発信する超音波の周波数は画面左側が50キロヘルツ、右が200キロヘルツで海中を探知した反応画像となっています。

この画像からは以下のような情報が得られます

  • 水深24メートル
  • 海底底質がRCKS(岩)、SAND(砂)、MUD(泥)、RCKS(岩)と変化している
  • 50キロヘルツの画面内にはSAND(砂)とMUD(泥)の部分に単体魚が存在する

魚探画面の撮影当日、周辺海域にてカワハギの数釣りができました。
スキューバダイビングでカワハギを観察すると、海底から1メートル以内を泳いでいることがほとんどで、海底からそれ以上浮上している姿を見かけることは滅多にありません。
この魚探画面では画面左(50キロヘルツ)側に「17」(センチ)と体長の数値が表現されている単体魚が映し出されており、その高さは海底から約5メートル浮かんだところにあります。通常よりも高いところを泳いでいますが、付近で釣ったカワハギも高めに仕掛けをホールドしてヒットしたので、その単体魚の反応はカワハギである可能性が高いと考えられます。

普段はあまり高く浮上しないカワハギを魚探にて直接探すのは難しく、ポイント探しは魚探に映し出される海底地形や底質からポイントを絞り込むことにならざるを得ません。

水中にてカワハギの棲息場所を観察してみると底質については砂、泥、小石、岩など様々な底質域に分布し、どの底質を好むとは一概に言えない状況でした。
岩礁やストラクチャー(傷害物)周りに集まるカワハギは小さな生物がお目当てなのか? 尖った口にて突っつくようにエサを食べていました。
一方、砂地や泥地においては砂や泥の中に生息しているエサを取るために口から水を噴き出すことで砂や泥をよけながらエサを探していました。
多くの魚種が泳ぎ回りながら捕食するのに対し、カワハギはエサのある場所にホバーリングして留まりながら捕食する点が大きく異なるところであり、そのホバーリングによって釣り人に気付かれないようにこっそりエサを取ることができるので”エサ取り名人”の異名を持っています。

前述したように捕食時は海底付近に居るので魚探ではカワハギそのものを見つけるのが難しくなるので、実際のポイント探しは海底底質ならびに海底ラインの変化を見ながら”根際の砂地”を見つけ出し、その場所を実釣スタートのポイントとするのが一番無難です。

  • カワハギを追う vol.6 釣果写真 カワハギはリリースすれば海中へ戻っていくことのできる魚なので、小型のものはリリースを心がけ、キープするのは良型のみに限定しよう
  • カワハギを追う vol.6 水中画像 ダイビングでカワハギを一番多く見かけるのが”根際の砂地”で、実釣をスタートさせるのもこの位置からがおススメ

この映像は水深18メートルほどの海中で撮影したもので、体長20センチ級のカワハギが写っています。海底は白っぽく砂地に見えますが実は高低差の小さな岩礁が連なるいわゆる平根で、場所によってその上に砂が堆積しています。
カワハギは岩礁周りや砂泥の中に生息するゴカイ、貝類、ウニ、甲殻類など様々な小動物を食べます。小型のカワハギは群れで行動することが多いのですが、成長するにつれ単独で行動することが多くなり、さらに縄張り意識も強くなるとダイビングで観察する範囲では感じ取れます。
この映像では2尾のカワハギが互いにくるくる回る様子が写っており、一見求愛行動に思われがちな行動です。しかしながら、実はこの2尾はどちらもオスであり、くるくる回る行動は縄張り争いのために互いに相手を追い回すことでこのように回ってしまっているのです。
縄張り意識の強い魚なので、ボートを停めてカワハギを狙い続けると付近のカワハギを釣り切ってしまうことにも繋がり、以降は釣れにくくなる可能性もあるので、ボートを移動させながら攻める場所を変えていく方がいいでしょう

著者紹介

友恵丸・友恵丸III 船長 小野 信昭 さん

FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター

北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。