魚種ごとの反応
この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?
ボートは時速2ノットほどの船速で走らせている最中に魚探画面をキャプチャ(撮影)しました。魚探から発信する超音波の周波数は画面左側が周波数の50キロヘルツ、右が200キロヘルツで海中を探知した反応画像となっています。
この画面画像はカワハギ狙いのポイント付近でキャプチャしたものです。
カワハギは初夏から盛夏にかけては水深5メートルほどの浅場にも多く分布し、秋が深まり水温が下がり始めるとやや深い水深へと棲息場所を移していきます。
カワハギが好む海底地形と底質は主に砂地に根が点在するような場所であり、魚探でもポイント探しは比較的容易です。
砂地においては砂の中に棲息するゴカイ、貝類を、岩礁地帯ではウニ、甲殻類など様々な小動物を食べます。
カワハギ以外の魚では潮上方向へ向いて口をパクパクさせながら潮流に乗って流れてくるプランクトン類を食べるものも多く存在しますが、カワハギは砂地や岩礁地帯で自らエサを探し求めています。
前述したように海底や岩礁にへばり付くように行動しているので魚探でカワハギ自体をキャッチすることは難しく、さらにその反応表示から魚種をカワハギだと断定するのはほぼ困難です。
但し、カワハギが海底付近を離れ、数メートル浮上することがない訳ではありません。例えば、釣り人が垂らした仕掛け(エサ)に興味を示して浮上したり、捕食対象となる越前クラゲなどが宙層に存在すればそれらを捕食するために浮上することもあります。
今回紹介する魚探画面はカワハギが棲息する近くで度々表示される反応事例になります。画像では2周波表示のそれぞれにおいて画面左寄りの部分の海底底質がRCKS(岩)となっています。そして海底ラインがRCKS(岩)部分からSAND(砂)部分にかけて高低差で2メートルほど水深が深くなっていることが画面画像から判断できます。
ここで注目して欲しい点がRCKS(岩)部分の海底ラインが海水との境界部分の他にも約2メートル下側にも淡い海底ラインが表示されている点です。
実はこの画像のように時間軸(横方向)の同じタイミングで濃い海底ラインと淡い海底ラインが生じているというのはその様に表示するための理由が海中景観に在るためです。
わかりやすくするために海中の探知範囲を模式的に円錐で表現しました。(下図参照)
図:海中の探知範囲
この円錐内の海底部分の約半分の部分がGRVL(礫)で、もう半分くらいの部分が高さ2メートルほどのRCKS(岩)の場合に、今回の画面画像のように濃い海底ラインと淡い海底ラインの2つを表示することになります。このことを理解した上で、魚探画面をチェックすれば、水中の様子を推測する精度が高まっていきます。
この映像は水深18メートルほどの海中で撮影したもので、体長20センチ級のカワハギが写っています。海底は白っぽく砂地に見えますが実は高低差の小さな岩礁が連なるいわゆる平根で、場所によってその上に砂が堆積しています。
カワハギは岩礁周りや砂泥の中に生息するゴカイ、貝類、ウニ、甲殻類など様々な小動物を食べます。小型のカワハギは群れで行動することが多いのですが、成長するにつれ単独で行動することが多くなり、さらに縄張り意識も強くなるとダイビングで観察する範囲では感じ取れます。
この映像では2尾のカワハギが互いにくるくる回る様子が写っており、一見求愛行動に思われがちな行動です。しかしながら、実はこの2尾はどちらもオスであり、くるくる回る行動は縄張り争いのために互いに相手を追い回すことでこのように回ってしまっているのです。
縄張り意識の強い魚なので、ボートを停めてカワハギを狙い続けると付近のカワハギを釣り切ってしまうことにも繋がり、以降は釣れにくくなる可能性もあるので、ボートを移動させながら攻める場所を変えていく方がいいでしょう
FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター
北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。