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魚種ごとの反応

カワハギを追う vol.9

今回はFCV-800にCW(連続波)タイプの送受波器(525-5PWD)とチャープタイプの送受波器(B150M)を同時に接続して得た探知画像を元に解説していきます。
この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?

カワハギを追う vol.9 GPS魚探映像 画面表示設定でCWタイプとチャープタイプを併記しました。海底付近の魚の映り方に違いがあります

この魚探画像は、船首に装備したエレキモーター(IPILOT)によってボートを0.3ノット程度の船速で走らせながら撮影(画面キャプチャー)したものです。

この画像からは以下のような情報が得られます

  • 水深24.3メートル
  • 海底底質はSAND(砂)とGRVL(礫)を交互に表示している
  • 海底付近に単体魚が表示されている

今回は画面の左から順にCWタイプの低周波(50kHz)、チャープタイプの中周波(125kHz)とそのAスコープを表示しています。
カワハギは水温が高めの時季には水深がやや浅い場所に単独または2~3尾で行動しており、水温が低い時期には水深30メートル以深で群れを形成して行動することが多くなります。

摂餌行動としては砂や泥の中に棲息するゴカイ、貝類、そして岩礁周りに棲息するウニ、甲殻類など様々な小動物を摂餌します。そのため遊泳層は海底付近となります。
遊泳層が海底付近となる魚は魚群探知機で捉えるのが従来は難しかったのですが、FCV-800の場合にはエコー色拡張機能を設定することで海底と魚を識別しやすくなります。

CWタイプでの表示では海底とカワハギらしき魚が繋がって表示されていますが、エコー色拡張を設定することで海底の黄色に対し、魚は青色に表示され識別しやすくなっています。
チャープタイプでの表示ではCWタイプに比べると分解能力が高いので海底とカワハギらしき魚が繋がっておらず、分離されているので魚を海底と認識間違いすることが少なくなりますが、さらにエコー色拡張機能を設定することで海底の緑色に対し、魚は赤色に表示され一層識別しやすくなります。

カワハギの棲息場所付近にはトラギスやキタマクラ、ベラ類などカワハギ以外の魚も多く棲息しており、カワハギのみを効率よく釣るためにはそれらの魚とカワハギを分離する必要があります。そのための仕掛けのタナを海底とするのではなく、数メートル浮かせる ” 宙の釣り ” という手法があります。この手法を実践する上でも海底付近の魚の泳層把握は大切であり、エコー色拡張機能と高分解能力を有する魚群探知機は優位性が高くなります。

  • カワハギを追う vol.9 釣果写真 水深24メートル付近で釣った25センチ級のカワハギ。このサイズになると引きも強烈です
  • カワハギを追う vol.9 水中画像 砂地に根(岩礁)が点在するような場所をカワハギは好みます

この映像は水深18メートルほどの海中で撮影したもので、体長20センチ級のカワハギが写っています。海底は白っぽく砂地に見えますが実は高低差の小さな岩礁が連なるいわゆる平根で、場所によってその上に砂が堆積しています。
カワハギは岩礁周りや砂泥の中に生息するゴカイ、貝類、ウニ、甲殻類など様々な小動物を食べます。小型のカワハギは群れで行動することが多いのですが、成長するにつれ単独で行動することが多くなり、さらに縄張り意識も強くなるとダイビングで観察する範囲では感じ取れます。
この映像では2尾のカワハギが互いにくるくる回る様子が写っており、一見求愛行動に思われがちな行動です。しかしながら、実はこの2尾はどちらもオスであり、くるくる回る行動は縄張り争いのために互いに相手を追い回すことでこのように回ってしまっているのです。
縄張り意識の強い魚なので、ボートを停めてカワハギを狙い続けると付近のカワハギを釣り切ってしまうことにも繋がり、以降は釣れにくくなる可能性もあるので、ボートを移動させながら攻める場所を変えていく方がいいでしょう

著者紹介

友恵丸・友恵丸III 船長 小野 信昭 さん

FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター

北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。