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魚種ごとの反応

コウイカを追う

映らぬ反応を探せ

コウイカを追う 砂地があり、なおかつエサが豊富な場所にコウイカは潜む

冬イカの代名詞コウイカは水深5~60mの砂地や砂れき帯に生息し、秋から早春が釣期。水温の変化に応じて生息水域を変える。シーズン初めの秋口は小型で、水温が高いことから水深10m付近で数釣れる。水温が下がり始めると成長しながら深いほうへと移動し、水温がもっとも低くなる早春には水深40~60mくらいにまで落ちる。その後、春~初夏に再び浅瀬へ回帰し、沿岸のアマモなどへ産卵し短い一生を終えるのだ。

ダイビングでコウイカを観察すると、砂地や砂れき帯の小さな窪みに身を隠していたり、海底スレスレを1~5杯程度で行動しているのを見掛けることができる。

砂地もただ平坦な場所ではなく、カケ上がりや、小さな根が点在するバラ根、近くに岩礁帯がある周りなど、海流に変化が生じやすい所に生息している。そのような場所はプランクトンが多く小魚やエビ・カニ類も集まるので、それを求めてコウイカもやってくるのだ。上の水中写真はコウイカを目撃した付近の海底の様子。画面左側から砂れき→砂地→岩礁となり、画面からその底質の違いがおわかりいただけよう。このような場所もコウイカの好ポイントの一つ。ちなみにコウイカは泳層が底付近だから魚探で反応を見つけるのは困難であり、魚探から海底の底質、起伏、そしてエサとなる小魚の反応などを見つけてポイントを推定していくとよい。

流すポイントを事前に確認

コウイカを追う 根の上に小魚の反応、すぐそばに砂地。こんな所も狙い目だ

コウイカの釣法は、シャコや有頭エビをテンヤに縛って釣るテンヤ釣法や、餌木やスッテを使う釣法などいろいろあるが、いずれの釣法でもスミイカの泳層となる海底付近を狙う。他のイカ類に比べると泳ぎが遅いため、実釣の最中はボートを止めるか、ゆっくり移動しながら広範囲を狙ったほうがよい。ところがゆっくりボートを移動させていくと、海底に根や起伏等の変化があったとしても、魚探でそれらの変化に気付きにくく、思いがけない根掛かりに苦しめられたりする。そこでオススメなのが実際に釣り糸を垂らす前に行うリサーチ作業。

釣り始める付近だけでなく、釣りスタート後にボートが流れて行くであろう方向の海中の様子を、事前にある程度把握しておくとよい。その際はボートのスピードを人間が歩く速さと同等(約2ノット)くらいにまで速め、海底の根や起伏などの変化をしっかり捉えておく。なお、使用する魚探に“海底拡大(表示)モード”機能が備わっていれば、海底のわずかな変化がさらに見つけやすくなるので有効活用したい。魚探ディスプレイの画像は水深26.6mのコウイカポイントで撮影したものだ。画面左が周波数50キロヘルツ、右が200キロヘルツによる表示となっている。どちらの周波数の表示にも左側に岩礁帯が映っている。その高さは隣接する砂地に対して約3m。が、この程度の高低差があっても、ボートの移動がゆっくりだと気付きにくい。この画像は前述したように人間が歩く程度の速さでボートを進めて撮影したものなので、約3mの岩礁帯もはっきり捉えているわけだ。そこで、ボートを流していく方向を「実釣前に海中トレース」。このテクニックはコウイカ以外のターゲットでも有効なので、ぜひとも実践していただきたい。

記事:小野信昭さん 協力:隔週刊つり情報

コウイカは水深5~60メートルの砂地や砂れき帯に生息し、単独で行動することの多いイカで、北は青森県から南の太平洋沿岸及び日本海沿岸に分布します。背部の外套膜の内側に甲羅状の骨があることにより'甲イカ'と名付けられ、また多量のスミを吐くことからスミイカとも呼ばれています。
映像にあるようにコウイカは海底付近にじっとしていることが多く、その姿はまるで海底に転がる石コロそっくりなのでダイビングで見つけるのにも苦労します。コウイカが居ることを知らずに近づいてくるエビ、カニ、シャコなどの甲殻類や、弱った魚などをコウイカは捕食します。コウイカの遊泳層は海底からせいぜい 1メートルであり、群れを形成しないので魚群探知機でコウイカそのものの反応を捉えるのは困難ですが、捕食行動に適した好条件の場所には複数いることが多いので、1パイ釣れたら付近一帯を丹念に攻めることが釣果を伸ばす上では必要で、GPSプロッタの使いこなしが有効な釣り物の一つです。

著者紹介

友恵丸・友恵丸III 船長 小野 信昭 さん

FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター

北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。