魚種ごとの反応
この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?
ボートは約2ノット(人間が歩くほど)のスピードで進めながら撮影したもので、周波数は200キロヘルツ、表示モードは「海底直線拡大」です。
実はこの釣り場で釣れたのはコウイカで、水中画像にもありますようにコウイカは砂地や砂泥、砂れき帯を好んで生息するイカです。
魚探画像の右側画面に注目すると海底付近に1m程度の高さの淡い反応が映っています。反応強度を表す色が海底の赤色とは明らかに異なることから、これは海底の起伏ではなく海底とは異なる物質であることが推測できます。このことは左側画面の「海底直線拡大」モードでも明らかです。こちらでは海底を直線表示に変換し、海底から5mまでの範囲を拡大表示しているのですが、前述した淡い反応がもし海底と同じ物質なら直線に変換されるはずですが、直線ではなく淡い反応のまま表現されています。つまりその淡い反応は海底とは異なる物質であることがここでも明確です。
自分のダイビング経験からすると、この淡い反応は海底付近にあるナチュラルストラクチャーで、砂地に点在する海藻群だと思われます。
砂地や砂泥地にはシロギスやハゼ類、エビ類が生息していますが、これらは外敵から身を守るため、いつでも隠れることのできる海藻周りに集まる傾向にあります。それらを捕食するために、コウイカ自体もストラクチャー周りに集まります。
コウイカの泳層は主に海底付近で、ダイビングで観察しても海底からせいぜい2メートル程度しか浮上したところを見たことがありません。それどころか、海底にじっと留まっていることの方が多く、獲物が近付いて来るのを待っているようにも感じられ、魚探でコウイカを捉えるのは難しいと痛感しました。
そこで、魚探を使ってナチュラルストラクチャーや、コウイカ自体がベイトから身を隠すことのできる砂地の窪みを探すことになります。
「海底直線拡大」モードでは、砂地の窪み部分は直線に変換されるため見つけることは困難ですが、海底に近い泳層の魚を海底と分離したり、海藻群などのナチュラルストラクチャーを探す上では効果抜群です。
また、海底付近を攻めるコウイカ釣りにおいては、根掛かり警戒レベルの把握にもなります。
ターゲットに合わせて画面表示モードを切り替えることで、本命ゲットへの道も広がります。
コウイカは水深5~60メートルの砂地や砂れき帯に生息し、単独で行動することの多いイカで、北は青森県から南の太平洋沿岸及び日本海沿岸に分布します。背部の外套膜の内側に甲羅状の骨があることにより'甲イカ'と名付けられ、また多量のスミを吐くことからスミイカとも呼ばれています。
映像にあるようにコウイカは海底付近にじっとしていることが多く、その姿はまるで海底に転がる石コロそっくりなのでダイビングで見つけるのにも苦労します。コウイカが居ることを知らずに近づいてくるエビ、カニ、シャコなどの甲殻類や、弱った魚などをコウイカは捕食します。コウイカの遊泳層は海底からせいぜい 1メートルであり、群れを形成しないので魚群探知機でコウイカそのものの反応を捉えるのは困難ですが、捕食行動に適した好条件の場所には複数いることが多いので、1パイ釣れたら付近一帯を丹念に攻めることが釣果を伸ばす上では必要で、GPSプロッタの使いこなしが有効な釣り物の一つです。
FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター
北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。