魚種ごとの反応
マダイはご存知の通りオデコ覚悟で狙う難しいターゲット。船長さんがポイントまで連れて行ってくれる釣り船さえ、オデコが続出する釣りである。むろんポイント探しが難しいというだけではない。釣り船では乗客にマダイが釣れるように船長がキメ細やかな操船を心がけてくれている。そのほんの一例が、オマツリやタナボケが発生しないように、釣り糸を立たせる操船技術である。ほか、潮を見て船を微妙に動かすということもあるという。
そう考えるとポイント探しも操船も、自ら行なわなければならないマイボートフィッシングで「マダイを狙う」という行為は、釣り船よりも一層ハードルが高い・・・と考えるのが普通だ。しかしながら、マイボートフィッシングにも有利な点が存在する。例えば、ひとたびマダイのポイントを見つけることができたならば、海中に向けて垂らす仕掛けの数が少ない分、自分のエサにマダイが食いつく確率が釣り船に比べて高くなる。むろん釣り糸を立てる操船テクニックなどが身についていれば、の話だが。
さて、マダイ釣りの難しさはこの辺までにしよう。ここから先は本題のポイント探しについて解説していく。マダイの寄り場、あるいは通り道さえ把握できるようになれば、一般的なコマセ釣りのほか、各種エビタイ釣法(地域によってコマセ釣りが禁止されている場合もある)、食い渋りに強い完全フカセ釣法やマキコボシ釣りなど、多様な釣り方で自在に楽しめるようになる。
マダイの習性、好みの海底地形などを大局的に把握していただきたい。マダイは片テンビン&コマセカゴ、これに長ハリスをセットしたコマセ釣法の確立により、今や一年中狙える魚となった。しかし、季節ごとに生息場所を変えるので、釣行する時期にその生息ポイントを攻められるかどうかが勝負の分かれ目となる。最重要課題となるポイント探しに欠かせないアイテムが魚群探知機であり、とくに初めて行く釣り場では、これが無くては話にならない。海域にもよるが、一般に夏季は水深10~50mくらい。冬季は水深50~150mくらいのエリアがポイントとなる。1年を通してマダイを狙おうと思ったら、少なくとも、水深150m以上の海底を楽々キャッチできる出力300ワット以上の魚探が理想的だ。
マダイはおおざっぱに「岩礁周り」を遊泳すると語られている。しかし、スキューバダイビングで目視したかぎりでは、極端に険しい岩礁帯よりも砂地や砂れき帯に小さな根が点在しているような所や、カケ上がりなど連続的な地形が変化する場所が好ポイントとなる。その様な場所には潮流によってプランクトンが溜まりやすく、それを目当てにエビなどの甲殻類が集まってくるようだ。
マダイは20cm前後の小さなものは群れで行動し、1キロクラスになると単独で行動しはじめる。また、3キロオーバーともなると警戒心が非常に強くなり、ダイビングで餌付けしても決して寄ってくることはなく、遠巻きに周囲を旋回しているだけだ。つまり、誰もが夢見るであろう立派なマダイとなると、そう簡単には釣れない。それだけに本命を釣った時の喜びは大きい。ましてや手前船頭のボートフィッシングで釣り上げた一枚は、喜びや充実感が倍増するわけだ。オデコを恐れず、勇気を持って第一歩を踏み出そう。
それでは、次のページでマダイが釣れた実績ポイントで撮影した魚探画面を見ながら、より詳しく解説していきたい。
記事:小野信昭さん 協力:隔週刊つり情報
水深20メートル前後の根際の砂地で撮影したマダイです。サイズは70センチ級で、単独で行動していました。
この映像の撮影時は海底から3メートルほど上を泳いでいました。ダイビングで目にするマダイで最も多いタナがこの海底から3メートルほど上であり、これだけ海底から離れていれば魚群探知機でも捉えやすくなります。もちろん水深や魚探の能力、そしてマダイの泳ぐ速さによって映り方の差異は生じます。むろんマダイの遊泳層は捕食対象(甲殻類、小魚、イカ類など)がどのタナにあるか、また水温によっても変わります。またこの映像には写っていませんが、自然界にはこのマダイと同様の遊泳層の魚も数多く存在します。魚探画面に表示された反応から魚種を判別するには実釣と反応画像の照合経験を積み、推察の精度を高めていくしか方法がありません。
FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター
北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。