魚種ごとの反応
この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?
この魚探画面は、スパンカーを使ったエンジン流しにて実釣している最中に撮影(画面キャプチャー)したものです。魚探から発信する超音波の周波数は50キロヘルツと200キロヘルツで、それぞれ画面の左側と右側に示してあります
この画面撮影時はコマセを使ったマダイ釣りの最中でした。
なぜこの釣り場を選んだかというと、魚探画面左(低周波)側に赤く囲んだ部分に単体魚の反応が映っていたからです。
マダイの場合、小型のものは複数で群れを形成して行動することが多いのですが、成長するにつれ単独で行動することが多くなります。
魚探に表示されるマダイは大きく明確な単体魚の反応として表示されることもあれば、この魚探画面のようにポツポツと小さな点で表示されることもあり、反応表示の大きさだけではサイズの判断まではできない難しさがあります。
アキュフィッシュ機能をONに設定していれば、魚体長を表示することもありますが、それでもマダイの場合には青物類ほど正しく表示されないこともあり、実際には点の表示からマダイの分布を推測する機会が多くなります。
この画面撮影時も小さな点による反応表示だったのですが、水深、海底地形、海底底質等の条件により、その単体魚の正体がマダイではなかろうか? という推測のもとに仕掛けを降ろしました。
魚探画面右(高周波)側にもその単体魚の反応は映っているのですが、それ以上に画面全体にわたってノイズが出ており、単体魚の存在を知ることが難しくなっています。
このノイズの正体は自船の魚探が発信する超音波と近くに浮かんでいた別のボートが発信する超音波が干渉したことにより発生する干渉ノイズであり、小さな点で表示される単体魚の反応表示を見えづらくさせています。
なお、この画面画像は海面から海底までを表示する設定のままで撮影しましたが、海底付近の一部分を切り出して拡大表示する機能(海底追尾拡大,海底直線拡大)を使えば海底から数メートルほど浮いた単体魚の反応をより明確に把握することが可能になるのでオススメです。
この画面撮影当日は、短時間の間にマダイを複数尾釣ることができました。
実釣時に注意した点は海面を基準にしたタナ取りの徹底で、コマセを詰めたコマセカゴを海底まで落とすようなことは一切行いませんでした。
というのも、コマセカゴを着底させてしまうと、海底付近に棲息するマダイ以外の小魚をマダイ狙いのタナまで浮上させてしまうことにもなりかねないからです。
魚探を使ったポイント探しの段階で付近の岩礁帯には頂上付近にはまとわりつくような魚群反応が映っていたので、海面からのタナ取りを徹底することでそれらエサ取りに悩まされることなくマダイだけを仕留めることに成功しました。
魚群探知機は本命の魚の居場所をつきとめるために使用するのはもちろんのこと、本命以外の魚に邪魔されることなく釣るための情報をも入手可能なツールであり、使いこなしが効率のいい釣りの実現につながります。
水深20メートル前後の根際の砂地で撮影したマダイです。サイズは70センチ級で、単独で行動していました。
この映像の撮影時は海底から3メートルほど上を泳いでいました。ダイビングで目にするマダイで最も多いタナがこの海底から3メートルほど上であり、これだけ海底から離れていれば魚群探知機でも捉えやすくなります。もちろん水深や魚探の能力、そしてマダイの泳ぐ速さによって映り方の差異は生じます。むろんマダイの遊泳層は捕食対象(甲殻類、小魚、イカ類など)がどのタナにあるか、また水温によっても変わります。またこの映像には写っていませんが、自然界にはこのマダイと同様の遊泳層の魚も数多く存在します。魚探画面に表示された反応から魚種を判別するには実釣と反応画像の照合経験を積み、推察の精度を高めていくしか方法がありません。
FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター
北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。