魚種ごとの反応
今回はGP-1971Fにトゥルーエコーチャープに対応した送受波器(B150M)を接続して得た探知画像を元に解説していきます。
この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?
ボートは風と潮に任せて流すいわゆるドテラ流しとし、ラバージグを使ってマダイを狙ういわゆる"タイラバ"での実釣時にこの魚探画面は撮影(キャプチャー)したものです。
チャープ用送受波器から発信する超音波は一つのパルス内で周波数を徐々に変化させ、一定の周期毎に送波するものとなっており、水中にて水と密度が異なるものに反射し、エコーとして送受波器に戻ります。
そのエコーに対してパルス圧縮処理を施すことで、パルス幅が短く、強いエネルギーの超音波を送受したのと同じ効果を得ることができるために高い分解能力を有する魚探画面を得ることが可能となります。
今回の魚探画面では海底から3メートルほどのところに単体魚が映し出されており、リトリーブによって浮上していくラバージグを追ってその単体魚も浮上していく様子が映し出されています。
ラバージグの軌跡の傾斜に対して単体魚の軌跡の傾斜が立っているのは、リトリープによって巻き上げられていくラバージグの速さよりも速いスピードで単体魚がラバージグを追っかけていることを意味しています。
画面では単体魚がラバージグに追い付いている様子までも表示していますが、今回は残念ながらバイト(魚が食いつくこと)までは至りませんでした。
その後、単体魚は翻って海底方向へ潜って行く様子も映し出されています。
魚探画面でこの一部始終を確認していたので、その単体魚がバイトしてくれなかったことが悔しかったのですが、次なる一手としたのはラバージグのリトリーブ(巻き上げ)速さで、先程までよりもやや遅いスピードにて巻き上げるよう心掛けました。
その甲斐あってか、その約10分後には同一ポイントにてマダイをゲット。
先ほどバイトせずに翻って潜行した単体魚がマダイだという確信が持てました。
今回紹介した様な魚がルアーを追うような様子は従来から主流となっている単一周波数(50キロヘルツや200キロヘルツ)でのパルス波による探知結果でも条件次第では捉えることが可能です。
但し、単体魚やルアーが小さかったり、それらによる反射波が弱いと画面に表示されにくくなります。
その点、分解能力が高いチャープ方式では単体魚やラバージグを捉えやすいので、今回のリトリーブ速さの修正のように魚探画面から得られる情報を実釣にフィードバックするうえでも有利となります。
今回、ラバージグを使ったマダイ釣りにおいてはチャープ方式の送受波器を使用することのメリットを実感することができましたが、これが他の釣りものに対して有効だとは言い切れません。
従来の単一周波の魚探なら魚体長を表示するアキュフィッシュ機能や海底底質判別機能などが使えるなど、それぞれにメリット、デメリットがあるので、釣りものごとに両者を試しながら、適材適所を見極めていきたいと思います。
水深20メートル前後の根際の砂地で撮影したマダイです。サイズは70センチ級で、単独で行動していました。
この映像の撮影時は海底から3メートルほど上を泳いでいました。ダイビングで目にするマダイで最も多いタナがこの海底から3メートルほど上であり、これだけ海底から離れていれば魚群探知機でも捉えやすくなります。もちろん水深や魚探の能力、そしてマダイの泳ぐ速さによって映り方の差異は生じます。むろんマダイの遊泳層は捕食対象(甲殻類、小魚、イカ類など)がどのタナにあるか、また水温によっても変わります。またこの映像には写っていませんが、自然界にはこのマダイと同様の遊泳層の魚も数多く存在します。魚探画面に表示された反応から魚種を判別するには実釣と反応画像の照合経験を積み、推察の精度を高めていくしか方法がありません。
FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター
北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。