魚種ごとの反応
この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?
ボートは風と潮に任せてゆっくり流しながら撮影(画面キャプチャー)したもので、魚探画面左側が周波数の50キロヘルツ、右が200キロヘルツで海中を探知した反応画像となっています。
画面内に点在する赤い数字は、アキュフィッシュ機能により得られた単体魚のサイズで、この単体魚こそがメバルです。
これまで何度か超音波と指向角について触れてきました。
例えば、「50キロヘルツでは指向角が大きく、200キロヘルツでは指向角が小さい」とか「指向角が大きい方が広範囲の魚をキャッチしやすい」といったざっくりした話だけを行なってきました。
今回はややマニアックな話をさせていただきます。
そもそも指向角は魚をキャッチできる範囲(角度)ではなく、送受波器(振動子)から発信される超音波の拡がり具合とその強さの関係を表現した数値なのです。
送受波器の正面(角度0°)方向にセンサーを設置して計測した時が超音波の強さが最大となりますが、正面に対してセンサーの設置位置を横方向へズラシ(角度を振っていく)と次第に超音波の計測値が小さくなっていきます。計測値が正面に対して半減した時点での角度の2倍を指向角と定めているのです。
また、この指向角は周波数のみによって決まるわけではなく、送受波器の発信部分の面積や発信強度分布の影響も受けることになります。
さらに詳しい話をすると、送受波器から発信される超音波は正面方向に向かうメインローブの他にサイドローブと呼ばれる斜め方向へ向かう超音波も発信され、特に水深が浅い所ではこのサイドローブによる反射波の影響が画面に表示されやすくなるのです。
実は今回の画面画像では50キロヘルツ側に大きな魚群のような反応が映し出されています。これはサイドローブを含めた広範囲から戻って来る反射波を統合的に表現したためで、実際のボート直下とはかけ離れた表示内容となっているので注意が必要です。
浅場での海中探知では50キロヘルツ側の表示情報に惑わされることなく、200キロヘルツ側から得られる情報にて釣り場を選定すべきという例です。
話をメバル釣りへ戻しましょう。
メバルはエサを求めて泳ぎ回るのではなく、エサの方から近づいてくるのを待ち続けることが多い魚です。
つまり、我々アングラーがメバルを狙う上では、我々の方からメバルが棲息する場所を探して近づいていく必要があります。
その上でも魚群探知機は不可欠なアイテムであり、表示画面の正しい解釈が求められます。
いよいよメバル釣りのベストシーズンを迎えます。釣って楽しく、食べて美味しいメバル釣りに挑戦してみてはいかがでしょうか。
指向角やサイドローブについての解説
魚探の仕組み「探知角度と探知できる範囲」
映像は砂地に設置されたブロック漁礁付近で撮影したメバルで、潮上へ向きじっとしている状況です。メバルが活発に摂餌するのは主に夜間で、日中にスキューバダイビングで観察できるメバルの様子はこの映像のようにじっとしている姿が多くなります。
メバルが棲息するのは小魚や甲殻類が多く集まるところで、漁礁等のストラクチャー(障害物)周りや海藻類が多く生えている根周りが好ポイントとなります。魚群探知機ではこれらの特徴的な地形を捉えることは容易ですが、この映像の様に小魚が数多く群れているような状況では小魚とメバルを分離して捉えることが難しくなります。映像に映っている小魚はネンブツダイやキンメモドキであり、どちらもメバルが好んで捕食する対象魚に当たりますが積極的に追い回すようなことはせず、じっとしていることで小魚たちに安心感を与え、近寄ってくるのを待っているように感じられました。
FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター
北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。