魚種ごとの反応
この魚探画像からどんなことが解り、どんなことが推測できますか?
スパンカーを張って船速0.2ノット程度でボートをゆっくり流しながら撮影(画面キャプチャー)したもので、魚探から発信する超音波の周波数は画面左側が50キロヘルツ、右が200キロヘルツで海中を探知した反応画像となっています。
この魚探画面はスルメイカの実釣時に撮影しました。
イカ類は、身体の密度が水に近いことや浮き袋を持たないことにより超音波を反射しにくいことは以前にも紹介しました。夏場の日中におけるスルメイカは水深100メートルを超えるような釣り場でねらうことが多く、その群れをキャッチするには魚探の使いこなしが求められます。
海中に向けて発信した超音波がスルメイカに当たって跳ね返り、送受波器に戻ってくる反射波が弱いことがスルメイカの居場所を見つけることを難しくさせています。
水深が深いことによって伝播する超音波が減衰することに加え、その途中に存在するプランクトンや浮遊物によって拡散反射することで送受波器に到達する反射波が少なくなり、その強度が小さくなることが主な原因と考えられます。
スルメイカの釣り場を探す上でボートアングラーに求められるのは微弱な反射波から算出したスルメイカのタナ(位置)情報をいかに認識しやすく画面に表示するかという魚探の使いこなしであり、そのことが釣果を大きく左右します。
その一つのテクニックが画面表示のゲイン調整で、たとえ自動(AUTO)モードを備えていても、手動モードを使ってシビアにゲインを調整した方が深い場所に棲息し、反射波が弱いイカ類をキャッチするうえでは経験上有利に感じています。
この画面撮影時は低周波(画面左)側はゲインを+63、高周波(画面右)側はゲインをMax(100)にしたことで海底付近のスルメイカやベイトフィッシュの存在がより明確な表示となりました。
この画像には表示されていませんが、ゲインを上げていくと宙層に存在するプランクトンや浮遊物、あるいはノイズが画面上に顕在化する場合が多々あります。特に水温が高い時期に発生することが多くあり、宙層から底層までビッシリ表示されてしまうことさえよくあります。
元々は底層付近のイカをキャッチしようと手動でゲインを調整したのに、底層付近までノイズ等で埋め尽くされては本末転倒です。
そうならないためにも、手動でゲイン調整するにしても画面表示を見ながら、徐々に上げていき、所望のゲイン値で折り合いをつける必要があります。
FURUNOフィールドテスター / DAIWAフィールドテスター / 月刊ボート倶楽部ライター
北は北海道から南は沖縄まで全国を飛び回りボートフィッシングを楽しむアングラー。スキューバーダイビングも経験豊富で、水中を知った上で行なう魚探の解説には定評があり、各地で行なうボートフィッシング講習も人気が高い。また、ボートフィッシングにおける安全面やルール、マナーの啓発にも力を入れており、自身が開設するウェブサイトやボート関連雑誌で古くから呼びかけている。著書「必釣の極意」、共著「魚探大研究」。