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海を安全に楽しむ知恵

シーマンシップ

シーマンシップというのは、「海で生きて帰るための知恵と技術」のこと。スポーツマンシップなどと使う場合とは、ちょっとニュアンスが違います。

海や自然を知ることはもちろん、操船技術やルール&マナー、天候・海況判断などなど。もちろん困ったときお互いに助け合う精神も、人知の及ばない海の上で生き延びるための大切なシーマンシップです。

というわけで、フネで海へ出ようと思ったら、絶対に必要になるこのシーマンシップですが、その広範な知識と技術は、実際に海に出て、体験から学ぶしかないことが圧倒的に多いのです。

我が家で、物心ついたばかりの息子にまず伝えたのは「フネの上では船長であるパパの指示が絶対である」ということ。普段は自由に楽しんでいても、いざパパの指示があったときには絶対に聞く――これが息子にとっての最初のシーマンシップでした。

その後も、フネに乗るたびに、海のルールや船上での安全についてなど、理解できる、できないにかかわらず、とにかく伝え続けています。注意をするときは、なるべくその“理由”もしっかりと伝えます。そうすれば、似たような他のケースでも、応用できる知識になるでしょう。どんなにがんばっても、私たちが伝えられることは限られていますからね。

幼いころから、操船を体験させつつ、見張りや交通ルールについて説明してきました。
どのくらい伝わっているかはまだ不明ですが…

海での大切な相棒であるフネの掃除やメンテナンスも大切なシーマンシップ。
今では帰港後の水洗いは息子の仕事です

ボート海水浴に挑戦

そして息子が7歳の夏、ボート海水浴を計画しました。ライフジャケットを着用して、船上から海へドボン! と飛びむのです。

これまでも息子には、水に慣れさせるために水泳教室に通わせたり、海水浴などでできるだけ海に触れさせてきたのですが、海の真ん中で泳ぐというのはまた独特の感触。だから落水時にパニックにならないためのトレーニングのつもりでした。

そして天気の良い夏休みのある日、海水浴場の沖にアンカリングして、いよいよ人生初のボート海水浴に挑戦! と、飛びこむ気満々でやってきた息子でしたが…。
トランサムに腰をかけ、体に水をかけたところでぴたりと固まってしまいました。思いのほか冷たい水と、目の前の海の深さに、今さらながらびっくりしたようです。

それからが本当に大変でした。絶対に海へ入ろうとしない息子を説得。30分ほどもかけて浮き輪&ライフジャケットでやっと海へつかったものの、体は固まり、ちょっとでもフネから離れると、恐怖の泣き声を上げます。

でも「パパだって最初のときは怖かったけど、そのうち慣れるから大丈夫」というパパの言葉通り、無理にでも海に浮かんでいるうちに、次第に力が抜けてきて、最後にはみんなに励まされ、とうとう勇気を振り絞ってボートから浮き輪に向かってジャ~ンプ!

そこには恐怖を乗り越えた、最高の笑顔がありました。

今年の夏もぜひまた飛び込みたい、と張り切っている息子。今度は浮き輪なしでがんばってみようね。

只今ロープワークの特訓中。練習ではできても、実地で戸惑うことがしばしば。
こればかりは実体験を重ねるのみですね

落水トレーニングを兼ねたボート海水浴。最初は恐怖で大泣きしていましたが、最後にはこんなに見事にジャンプできるようになりました

著者紹介

伊藤佳子 さん

フリーランスライターを務める兼業主婦

ボート&ボートフィッシング雑誌「Boat Club」のもと編集者。現在は子育てのために独立し、フリーランスのライターを務める兼業主婦。全長16フィートのプレジャーボートをマリーナに置いて家族そろってボート遊びと釣りを楽しむほか、2馬力専用インフレータブルボートでの釣行も楽しんでいる。